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-世界が認める工業製品-

取材・文:末吉陽子(やじろべえ)  写真:小野奈那子 

取材・文:末吉陽子(やじろべえ)

写真:小野奈那子

●素材組み合わせの妙を極める。アイデア勝負の“包装力”

――ジャパン・プラスは、製品を包む「梱包材」、製品にかかる衝撃を和らげる「緩衝材」、両方の物流商品を開発・製造されています。その種類は無数にあるとのことですが、代表的なものをご紹介いただけますか?


若林さん(以下、敬称略):たとえば、台紙に商品をのせて上からフィルムでパックする「スキンパック」や、プラスチックシートを箱型にした「クリアケース」、フィルムに空気を入れてパック状にした「エアー緩衝材」などは、みなさんもよく目にされているかもしれません。私たちが得意としているのは、フィルムシートを加熱軟化して、シートと型の間を真空にして密着させる「真空成型」という成型法。この技術を活用した梱包材や、緩衝材などを主に手掛けています。

――オーダーメイドで少ない数量での注文も受け付けていらっしゃいますが、開発から製造までどのようなプロセスをふむのでしょうか?


若林:オーダーメイドの場合は、製品の図面や見本などをいただき形状を確認するところからはじめます。そして、どのような素材の梱包材や緩衝材が適しているか、過去の事例も参考にしながらCADで設計していきます。そこから一度見本を作って、細かく調整。内容が固まったら、工場で製造を進めていくという流れですね。


――紙やプラスチック、ダンボールなど多種多様な素材を取り扱うのも、御社の特徴ですよね。


若林:そうですね。梱包材や緩衝材の業界は、“ダンボール専門”  “発泡スチロール専門”と、特定の素材に特化しているケースがほとんどですが、私たちはどんな素材であれ、製品の特性に応じて組み合わせて作ることを得意としています。プロダクトデザイン専門のスタッフがいるのも、業界では珍しいかもしれません。

●フィルムを駆使したオンリーワンの新技術

――つまりニッチなゾーンで勝負されているということですよね。それは、なぜでしょう?


若林:たとえば、シンプルな紙箱やダンボールの仕切りなどは、どこの業者でも簡単に作れてしまいます。狭い業界ですし、市場も広くありませんから、そんな当たり前の製品を作っているだけでは立ち行かなくなってしまう。生き残るには、唯一無二の製品を作り続ける必要があります。そんなことを意識し続けた結果、自然とユニークな製品が出来上がっているのだと思います。


――では、数あるユニークな製品のなかで、特に会心のアイデアを挙げるとしたら?


若林:たとえば、フィルムを使った緩衝材「J1-BOX」でしょうか。丈夫で伸縮性のあるポリウレタンフィルムをダンボールに貼りつけて、製品を挟み込むものです。フィルムをハンモック状にして、製品を宙づりにすることで落下の衝撃や振動から中身を守ることができます。今までになかったタイプの緩衝材で、パソコンや精密機器の運送用に利用いただいています。


――これならゴミも少なくて済みそうです。


若林:環境に優しいのも特長ですね。フィルムと段ボールで構成されているので廃棄も簡単。梱包材しかりですが、製品に厳密に合わせたものを作ろうとすると、金型代が数百万円単位で掛かってしまいます。さらに、組み立てる作業も複雑でマンパワーが必要です。そうしたコストのかかる工程の一切を、フィルムで簡略化できるため画期的な緩衝材だと思います。


――実際に観察すると、どれも緻密に作られていることが分かります。とはいえ、購入者の目的はあくまでも製品であり、梱包材も緩衝材も目的を果たしたらゴミとして捨てられてしまうものですよね。そこに虚しさを感じることはありませんか?


若林:そうですね。一般的には「ゴミとして捨てるもの」という認識しかないでしょうし、それはメーカーからすると悲しいところではあります……。ただ、だからこそ「美しさ」にはこだわりたいんです。たとえば、同じ梱包でも封を開けたときに発泡スチロールや紙くずがバラバラと出てくるものより、フィルムでスッキリまとまっていた方がストレスも感じないでしょう。ただの緩衝材ではなく、プラスアルファの価値を出していきたいと思っています。

――確かに「J1-BOX」しかり、スマートな見た目の梱包材や緩衝材が多い印象です。


若林:最近では「J1-BOX」から派生して、立体物をフィルムに挟んでディスプレイできる「人形ケースタイプ」のボックスも誕生しました。宙に浮いているような見た目もユニークで、贈り物はもちろん、時計やミニカーなどを店舗にディスプレイする時にも活用していただいております。こうした商材は、使い勝手よりもアーティスティックな見せ方を意識したものになりますね。

――意外といったら失礼ですが、じつはクリエイティブなお仕事なんですね。


若林:そうですね。尖ったアイデアをベースにした製品づくりはやはり楽しいです。ただ、私はどちらかというと、お客様の要望に沿ったものを作りたいという思いの方が強いですね。やはりお客さんから、「思っていたよりも良いものができて良かったです」とおっしゃっていただけるのが何よりも嬉しいですから。


――過去、若林さんが担当されたオーダーメイドのアイテムのなかで、特に思い出に残っているものはありますか?


若林:サザンオールスターズのグッズでしょうか。納期が通常の3分の1とタイトだったこともあり、いつもはお断りする案件なのですが…。私自身がじつはサザンの大ファンでして、工場にも何とかお願いして受けることになりました。製品はサザンのカセットテープだったのですが、「面白いパッケージを作ってほしい」というお話で、「人形ケースタイプ」のデザインを応用し、印刷の色味などもこだわって仕上げました。

――アーティストグッズは変わった形状のものも多いので、パッケージも工夫が必要ですね。


若林:はい。過去には「ギター型」の梱包材も手掛けたことがあります。通常のものより難易度は高いぶん、やりがいもありますね。

●黒子だからといって「クリエイティブを諦めない」

――では最後に、このお仕事の面白さを教えてください。


若林:醍醐味は、お客様のイメージを具現化できるところでしょうか。ディスプレイやパッケージのデザインや、出来上がるまでの過程も面白いのですが、実際に使用されている場面や店頭で目にすると感動します。一般のユーザーの皆さんはそこまで注目していないかもしれませんが、我々としてはやはり一つひとつのデザインに思い入れがあります。梱包材や緩衝材はあくまで黒子。主役を安全に運ぶための道具に過ぎません。でも、だからといってクリエイティブな発想を閉ざして、規格品だけに留まってしまうと世界が広がらない。ですから、今後もこれまでにない製品を生み出していきたいと思います。

シリーズ: Makers(メーカーズ) vol.2

タイトル: 緩衝材

取材先 : ジャパン・プラス株式会社

URL   : http://www.j-p.co.jp/

取材日時: 2018/3/20



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